フッティルーテンの船上で会った日本人男性の話


2014年10月当時、私はノルウェーを旅行していて、【世界でもっとも美しい船旅】と称されている、ノルウェーの沿岸急行船・フッティルーテン(Hurtigruten)に乗船していました。
日本人は私ひとりだけかと思っていましたら、船内でひとりの日本人男性に会いました。

その方は65歳(当時)で定年退職後のご隠居中の身で、おひとりでヨーロッパを周遊している最中だそうでした。
その方とは朝、フッティルーテンのデッキで初めてお会いしたにもかかわらず、私にコーヒーを奢ってくれました。
私とその男性はこれまでのいろいろな旅の話をお互い交わし合い、談笑していました。

この後、一旦この男性とは別れて、それぞれ思い思いの時を過ごしました。
そして、その日の夜のことです。私はその男性に夕食のお誘いを受けました。
場所は船内にあるレストランで、ドレスコードが必要なんじゃないかと思うくらい、いかにも高そうな雰囲気。
その男性はひとりで予約を取っていたそうですが、急遽、私の分まで予約を取ってくれました。

レストラン内の様子

コース料理で出されたデザート

おいしいディナーに舌鼓を打ちながら、私とその男性は会話を楽しんでいました。
レストランの高級そうな雰囲気にすっかり恐縮してしまっていた私ですが、すると、なんとその男性はひとりで夕食を食べるのは寂しいからとか、話し相手が欲しかったからだとか、自分の息子と私の年齢が同じくらいだからとか、もっともらしい口実をつけて私にディナーをご馳走してくれました。
最初は丁重にお断りましたが、結局はご厚意に甘えることになりました。

お値段は言えませんが、物価が鬼のように高いノルウェーでそんなことをしたら、出費がかさんでしまうし、なによりも何も提供していない私がタダ飯をいただくことには、さすがに気が引けました。
なので、私はコーヒーとディナーのせめてものお返しにと、お土産屋でフッティルーテンのTシャツを購入して、その男性にプレゼントしました。
高級レストランのディナー代と比べたら、全然しょぼくて恐縮でしたが、(当時)無職の私には、これくらいのことしかできませんでした。

ベルゲンに到着後、その男性はついでだからと私とタクシーを乗り合いして、私を宿泊する予定のホステルまで送ってくれてしかも、タクシー代まで出していただけました。
なにからなにまで、至れり尽くせりで、恐縮しっぱなしでした。

一期一会。これだから、海外ひとり旅はやめられない。
私もそんな素敵な大人になりたいと思いましたし、私も旅やイベントなどで若い子と出会う機会や、濃密な時間を過ごす時があったら、投資と応援の意味合いを含めて、同じことをしようと思いました。
映画のペイ・フォワード(Pay It Forward)の精神を持とうと思いました。

その男性には5年経った今でも忘れられず、心から感謝しています。
ディナー、ごちそうさまでした。本当にありがとうございました。
Bon Voyage!!
人の優しさに触れて、思いがけず泣きそうになりました。
そんな素敵な出会いのお話でした。

※ちなみにペイ・フォワードという名前の映画があり、今はすっかり姿が変わってしまったハーレイ・ジョエル・オスメント(Haley Joel Osment)出演の作品でもあります。
善意を他人へ回すという素敵な思考が描写された、隠れた名作です。


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